Peter Ompir ピーター・オンピア その人と作品 最終回(トールペイントの歴史)
■愛弟子ワーナー・リードとの出会い、そして共同生活
ピーター・オンピアともっとも長く過ごした弟子ワーナー・リード。彼が、ピーターの名を語るきっかけとなったのは意外な一言からでした。
ピーター・オンピアにとって、ひとつの作品を作り上げることは、非常に時間のかかる作業でした。彼はアシスタントを持つことを考え、そのときに出会ったのがワーナー・リードだったのです。ニューヨークで創作活動に入って間もない時期でした。
リードは、ニューヨークからバーモント州、マサチューセッツ州シェルフィードと移動を重ねるピーターとともに共同生活を送りながら、彼の創作活動をサポート。リードの仕事は、下準備に必要なサンディングや下塗り、色付けばかりだったようです。ところが、ある日突然、ピーターは彼に筆を渡し、「さぁ、もうできるだろう。自分の絵を描いてみろ…」と告げたのです。
ピーターは、共同生活の中からリードの絵を描く素質、そして自分と同じように辛抱強く地道に努力する姿勢のあることを見抜いていたのかもしれません。
こうしてリードは、図らずも自分の作品を創作するようになりました。しかし、!ピーター・オンピア"という名前は二人の共同作家名として使われていたため、当時の作品にリードの名前を見ることはありません。
ファンやコレクターの中には「私ならピーター本人が描いた作品と彼の弟子によるものとを見分けることができる!」と自信を持って語る人がいます。しかし、ピーター自身、自分の作品にサインはしましたが、作品の出来上がった年月日を書くことをしませんでした。唯一見分ける方法は最初にその作品を買った人の記録から市場に出た年や時期を推察することで見極めるしかなく、コレクター泣かせの芸術家だったようです。